コロナ禍でソーシャルディスタンスを取りましょうと言われている中、スーパーやコンビニのレジに並んでいる時に、自然と床にある矢印や立ち位置に立っていますよね。
実はこれには、行動経済学の「ナッジ理論」が用いられていて、この「ナッジ」は、人々に自発的に望ましい行動を取らせることができることから、社会的問題の解決にも使われているのです。
例えば、イギリスロンドンでは、街からタバコのポイ捨てをなくすため、灰皿の投入口を2つに分け、投票箱にしました。「どちらのチームが好き?」という文言を掲げ、それぞれの箱に有名サッカーチーム名を記載したのです。結果は、次々と投票箱に吸い殻を入れ、それを見た人がさらに続き、数日後には、タバコのポイ捨てする人はほとんどいなくなりました。
1.日常の消費行動に用いられている?
では、日常の消費行動には、どのように使われているのでしょうか。
先ほどのレジの話に戻りますが、しっかり床の矢印に従って、立ち位置で並んでいた時、ついレジ横の商品に目が留まり、追加でカゴに入れ込む、なんていうことはありませんか。このように何気ない日常の消費行動にも行動経済学は使われています。
伝統的な経済学では、「人間は合理的に行動する」とされています。ですが、実際の私たちは必ずしも、合理的な行動をしないのです。
マーケティングの巨匠フィリップ・コトラーは、「行動経済学はマーケティングの別称」と語りました。行動経済学を知ることで、人間の意思決定のクセを知り、消費者がモノを買いたくなる心理を理解することができます。消費者の心理を理解して、有効な方法を選んでいきましょう。
2.行動経済学をマーケティングに活用した事例
行動経済学をマーケティングに活用した事例として、既に定着している例からお話します。
980円か1,000円か問題です。たった20円の差で、安く見せようとしていることはわかってはいるのですが、やはりこちらにお得感を感じてしまうのではないでしょうか。世の中には大台に上る手前のぎりぎりの金額設定のものがあふれています。
次に、皆さまご存じのダイエット業界で大成功したあの事例です。楽して痩せたい、食事制限なしなどのダイエット法がメインだったこの業界に現れた、楽じゃない、食事制限もあるダイエット法。でも絶対結果を出すとコミットした方に、専属トレーナーがマンツーマンで指導しますというもの。
こちらに使われている行動経済学の考え方ですが、
まず、結果が出なければ全額返金保証ということで、損はしないということから入会しやすくなります。
<損失回避性>
次に、せっかく始めたのだから続けないとかけたお金や労力、時間を損するといった
<サンクコスト効果>も働きます。
さらに、ダイエットプログラムに取り組むことが、普通になり、その状況を維持したくなります。
<現状維持バイアス>
こういった要因で結果が出るまで、取り組むことになります。
3.営業パーソンに役立つ行動経済学
では、今日はここで、ビジネス、特に営業パーソンに役立つ行動経済学を一つご紹介します。
取引したい相手に断られてしまった そんな時に使える行動経済学の考え方になります。
それは、あたりまえのようですが、何度も接触をすることです。これは<単純接触効果>と言って、人は接触回数が増えると相手に好感を持つためです。ダイレクトメールやメール、LINE公式などを送る、直接会いに行くなど、接触回数を増やす試みをすることです。シンプルですがやはり外せないものです。
もう一つは、セールストークの際に、「皆さんにお選びいただいています」などと他の人の行動をお知らせすることです。お客様の同業種の方の状況や数字を示すとより効果的です。これは、イギリスロンドンのタバコのポイ捨てでもありましたが、他の人がやっていることに同調するという<同調効果>を用いるものです。
この他にもたくさんの意思決定のクセがあります。私たちの日常は意思決定の連続です。このクセを知り、マーケティングや社内でのマネジメント、そして自己管理に役立てていただければと思います。
今回の内容が皆様のビジネスの参考となりましたらと幸いです。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
↓コラムはこちらからもご確認いただけます。↓