「終活」という言葉も昨今は聞き慣れてきました。今回は、終活の中でも遺言の作成方法や遺言の種類について説明いたします。
民法上有効な遺言の種類について
遺言は、特別な場合を除いて、自筆証書、公正証書又は秘密証書のどれかによらなければ法律上有効になりません。
1.自筆証書遺言
手続面で簡易な遺言作成方法としては、自筆証書遺言が考えられます。
自筆証書遺言は、全文を遺言者が手書きして作成する必要があります。パソコン等での作成では要件を満たさず、法的に有効な遺言になりません。
平成31年の改正により自筆証書遺言に添付する遺産目録は自書である必要はなくなりましたが、遺言の全文、日付及び氏名は自書である必要があります。
また、遺産目録を自書以外で作った場合には、その全ての頁に署名押印しないといけません。さらに、遺言には本人の署名押印、作成日付の明記が必要です。「吉日」では日にちの特定に不十分という裁判例もありますので、注意が必要です。
また、自筆証書遺言は、家庭裁判所の検認という手続きが必要になります。
作成した自筆証書遺言は、作成者が保管するだけでなく、自筆証書遺言書保管制度の利用も考えられます。自筆証書遺言書保管制度とは、法務局に自筆証書遺言を預けられる制度です。
遺言は原本と画像データの両方で保管されるため、相続人はデータなら全国どこの法務局でも相続開始後に遺言を閲覧することができます。
法務局に保管する自筆証書遺言は書式が定められているため事前に確認する必要がありますが、法務局で保管する際に民法上の形式面のチェックを受けられる点、法務局で保管された自筆証書遺言は、家庭裁判所での検認の必要はないという点でもメリットがあります。
2.秘密証書遺言
次に、秘密証書遺言が挙げられます。
秘密証書遺言は、遺言を作成した後、公 証人と証人の前で封をして遺言の内容を秘密のまま保管する方法です。遺言の内容を秘密にしたまま保管でき、封をしているため保管中の偽造・変造が防止できます。ただし、自筆証書遺言と同様に家庭裁判所の検認が必要です。もっとも、作成にあたって署名、押印は必要になるものの、自筆証書遺言のような全文自筆でなければならないといった要件はありません。
しかし、自筆証書遺言保管制度のような制度はない点、証人が2人以上立ち合う必要がある点などから最近は使われる機会は減っているようです。
3.公正証書遺言
最後に、公正証書遺言は、本人が公証人に対して遺言の趣旨を口頭で伝える方式で作成する遺言です。
遺言者が口頭で遺言内容を伝えて作成するため、形式面の問題は生じません。
また、公正証書遺言の原本は法務局で保管し、本人には正本と副本が交付されます。
ただし、公正証書遺言は、法務局で作成をするため、費用が発生します。この公正証書遺言作成の費用は、相続財産の価格によって決まります。
また、公正証書遺言を作成する場合には2人以上の証人の立ち合いが必要になります。
しかし、適当な証人が見当たらない場合は、公証役場で紹介してもらうことも可能です。
公正証書遺言では、遺言作成時に公証人が本人の意思能力を確認するため、成立の真正が争いになりにくいというメリットもあります。