相談内容
母が亡くなり、四十九日が終わりました。父は10年前に亡くなっており、長女である私と妹の2人が相続人となりました。母の相続財産は預貯金200万円のみです。妹は県外で生活しており、高齢の母の世話をしておらず、もっぱら私が母の世話をしてきました。母は、生前、自宅の不動産を私に贈与しており、お金の管理も私が任されていました。
妹は、四十九日が終わった後、弁護士を立てて、内容証明郵便を送付してきました。その文書には、自宅の不動産の名義が私に変わっているが、この当時、母は認知症であったため、母の意思に基づかない名義移転であったこと、母の預金から多額の使途不明金が出金されていることから、これらの金額を遺産に含めて遺産分割を希望することが記載されていました。
解説
このようなご相談を受けることは多くあります。この段階になった場合には、弁護士に相談して対応したほうが良いでしょう。今回は、このようなトラブルが起きないためにどうすべきか、また、仮にトラブルが起きてしまった場合に備えて、何をしておくべきかという点をご紹介したいと思います。
まず、このようなトラブルが起きないために望ましいのは、お母様の判断能力に問題がないことがわかる診断書を取得していただき、お母様から遺言書を作成しておいてもらうことです。ただ、お母様に遺言書を作成する気がないのに、無理に作成させることはできません。
そのような場合、相談者様は、不動産の贈与の前に、お母様から妹さんに対して、自宅不動産を相談者様に贈与すること及びその理由を説明しておいてもらったほうが良かったと思います。
通常はお母様が説明すればそれで足りると思いますが、妹さんが、後々そのような説明は受けていないと争う可能性もないわけではありません。このような場合に備えて、例えば、お母様に、妹さんへ電話で説明してもらう時には、相談者様において、お母様の説明を録音しておくことも一つの手です。
使途不明金についても、大きな出費がある時は、お母様から妹さんに対して話しておいてもらうと良かったでしょう。
それでは、細かい出費についてはどうでしょうか。細かい出費について、逐一お母様から妹さんに説明しておいてもらうことは、現実的には難しいでしょう。他方で、細かい出費がある場合に争いにならないかといえば、そういうわけでもありません。預金口座から1万円の払戻しがあるだけで、使途不明金であると争いになることもあります。
このような場合に備えて、お母様のお金と相談者様のお金を明確に分けて管理し、お母様のお金を支出した時は、レシートを残しておくと良いでしょう。例えば、金銭出納帳をつけるのは大変ですが、お母様のお金を支出した都度、ノートにレシートを貼り付けていくのであれば、それほど手間ではないと思います。
そして、注意が必要なのは、管理するお母様のお金から自己のための支出をせずに、お母様にかかった費用に限定して支出をすることです。
例えば、お母様が入院したり、施設に入所したりした場合に、相談者様が面会のために交通費を負担したときは、お母様の預金から出金したい気持ちになるかもしれません。また、相談者様が、お母様と同居しており、水道光熱費をお母様の預金口座からの引落しにしていた場合に、お母様が施設に入所した後も、引落口座を相談者様の名義に変更せず、お母様の名義のままにしておくことも想定されます。
これらの場合、妹さんから、交通費や水道光熱費は相談者様が負担すべきであるとして、その支出について争われる可能性があります。トラブルになった場合に備えて、お母様の財産をきちんと管理し、その証拠を残しておくことが必要です。