コラム

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養育費の算定について

2024.06.05

 離婚をする際に、経済的に自立していない子がいる場合、養育費の分担について取決めをする必要があります。ところが、離婚届用紙の養育費の取決めの有無を尋ねるチェック欄で「取決めをしている」との回答は6割程度のようです。
 養育費を簡易迅速に算定できるように、裁判所ウェブサイトでは、標準算定方式・算定表を公表していますが(https://www.courts.go.jp/toukei_siryou/siryo/H30shihou_houkoku/index.html)、算定表に当てはまらないケースもありますので、養育費算定の考え方について、確認しておきます。

《養育費算定の考え方》

 養育費は、子に必要な生活費を親である権利者と義務者がその収入に応じて分担しますが、標準算定方式では、分担の対象となる子に必要な生活費を、子が義務者と同居したと仮定してその場合に子に割り振られる生活費とします。
養育費は、①基礎収入の算出、②子の生活費の算出、③子の生活費を基礎収入で按分する、といったステップを踏んで算定します。

① 基礎収入の算出

 権利者と義務者それぞれについて基礎収入を算出します。
総収入から控除される職業費、公租公課、住居関係費、保険関係費を実額で求めることは煩雑ですので、収入に応じた基礎収入の割合によって基礎収入を算出します。
 給与所得者の場合は総収入の54~38%、事業所得者の場合は総収入(=課税所得)の61~48%が基礎収入となりますが、いずれも高額所得者の方が基礎収入の割合が小さくなります。

② 子の生活費の算出

 子に割り振られる生活費を義務者の基礎収入を義務者と子の生活費指数で按分して算出します。
子の生活費指数は、大人を100とした場合の子の生活費の割合です。14歳までを62、15歳以上を85とします。

③ 子の生活費を基礎収入で按分

 子に割り振られる生活費を、権利者と義務者とで、基礎収入の割合で按分したものが義務者の分担すべき養育費となります。

 

【事例1】

義務者の給与収入が800万円、権利者の給与収入が300万円、権利者が14歳までの子2人を養育する場合
① 基礎収入
 基礎収入の割合は、義務者は40%、権利者は42%となりますので、
 義務者 320万円(800万円×40%)
 権利者 126万円(300万円×42%)
② 子の生活費
  子らの生活費指数は、いずれも62
  子らに割り振られる生活費は、
  320万円×(62+62)/(100+62+62)≒177万1000円(千円未満四捨五入。以下同様)
③ 義務者の分担額
  177万1000円×320万/(320万+126万)≒127万1000円
  月額は、10万6000円(なお、算定表では、10~12万円となります)。

 

【事例2】

 義務者の給与収入が800万円、権利者の給与収入が300万円、権利者が14歳までの子2人及び15歳以上の子2人を養育する場合
① 基礎収入
  基礎収入の割合は、義務者は40%、権利者は42%となりますので、
   義務者 320万円(800万円×40%)
   権利者 126万円(300万円×42%)
② 子の生活費
  子らの生活費指数は、14歳までの子は62、15歳以上の子は85
  子らに割り振られる生活費は、
  320万円×(62+62+85+85)/(100+62+62+85+85)≒238万8000円
③ 義務者の分担額
  238万8000円×320万/(320万+126万)≒171万3000円
月額は、14万3000円

 

《権利者の収入が義務者よりも高い場合》

 これまでは、義務者の収入が権利者よりも高い場合を見てきましたが、権利者の収入が義務者より高い場合はどうでしょうか。
 養育費の分担義務は、生活保持義務ですので、子は親と同程度の生活を要求することができます。
 そのため、両親の生活程度に差があるときは、子の福祉という観点から、子は生活程度の高い方の生活を要求することができると考えられます。
 しかし、子の生活費を高額の方を基準にしますと、高額になればなるほど義務者の分担額が増加し、義務者に過酷となりますので、算定の際には、権利者の収入を義務者の収入と同額と扱うことにしています。

 

【事例3】

義務者の給与収入が300万円、権利者の給与収入が800万円、権利者が14歳までの子2人を養育する場合
① 基礎収入
基礎収入の割合は、義務者は42%、権利者は40%ですので
   義務者 126万円
   権利者 320万円(ただし、権利者の収入は126万円として計算します。)
② 子の生活費
  126万円×(62+62)/(100+62+62)≒69万7000円
③ 義務者の分担額
  69万7000円×126万/(126万+126万)=34万8500円
月額は、2万9000円(なお、算定表では、2~4万円となります。)

 

◆講師プロフィール◆
弁護士法人青山法律事務所
小田 将之

<得意分野>
借金問題 遺言書の作成・執行

<ご挨拶>
依頼者の皆様からの「ありがとうございました」の言葉を心の糧に、丁寧かつ誠実な対応を心がけております。 困りごとがございましたら、お気軽にご相談ください。

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