令和8年度から、中学生の部活動が大きく変わります。
これまで、中学生のスポーツや文化芸術活動の多くは、学校の部活動で行われてきましたが、これからは、地域クラブ活動(学校が関与しない)を中心に行われるようになります。地域のクラブ活動は、すでに小学校などでは、多く行われているところでさまざまなスポーツの地域クラブが存在します。その地域クラブの運営形態の多くは、保護者会なるものが存在し、運営されています。監督やコーチは、保護者や地域のボランティアの方がされています。
ここで、保護者会が支出する運営費のうち、監督やコーチに年に一度、指導料として謝金を支払うことがあります。保護者会から、心ばかりの謝金を監督やコーチに渡したくなることは当然なことだと思います。しかし、細かい性格の私が気になるのが、保護者会から監督やコーチに支払われる謝金には、所得税の源泉徴収をしなくても良いのかという点です。
検証してみました。
1.保護者会は源泉徴収義務者か?
源泉徴収制度においては、源泉徴収に係る所得税や復興特別所得税を徴収して国に納付する義務のある者を「源泉徴収義務者」といいます。源泉徴収の対象とされている所得の支払者は、それが会社や協同組合である場合はもちろん、学校、官公庁であっても、また、個人や人格のない社団・財団であっても、全て「源泉徴収義務者」となります。ただし、個人が支払う一定の場合は、源泉徴収を要しないものもあります。(法人はすべて「源泉徴収義務者」となります。)
では、保護者会はどうかというと、税法上「人格のない社団等」呼ばれ、法人とみなされます。
したがって、保護者会が支払う源泉徴収の対象とされる支払いについては、源泉徴収義務が発生します。
2.指導料の対価としての謝金は源泉徴収の対象か?
源泉徴収の対象となる所得の範囲は、その所得の支払を受ける者の区分に応じて決められており、全部で8項目あります。その5項目に、報酬・料金等とあります。そして、その報酬・料金等で、源泉徴収の対象となる支払の区分が細かく定められています。
報酬・料金等のうち、「技芸、スポーツその他これらに類するもの(実技指導等)の教授若しくは指導又は知識の教授の報酬・料金」は源泉徴収の対象であるとされています。
したがって、監督やコーチが行う指導の対価として金銭が支払われた場合は、源泉徴収の対象となります。また、所得税基本通達では、「謝礼等の名義で支払われても、それぞれの報酬・料金等として源泉徴収をする必要がある。」とされています。
上記1.2.のことから保護者会が監督やコーチに指導料として支払う謝金には、源泉徴収をしなければならない、ということになります。