コラム

Column

民法改正(こどもの扶養関連の改正)

2025.05.20

法律の改正は日々行われていますが、私たちの身近な生活に関わる「民法」という法律もちょくちょく改正されています。最近では、令和6年5月に改正が決まり、令和8年5月までに施行される予定となっています。

今回は、この改正のうち、こどもの扶養に関連するものについてご紹介いたします。

1.親の責務に関するルールの明確化[i]
まず、婚姻関係の有無に関わらず、父母が子に対して扶養義務を負うことが明文化されました。また、子に対する扶養の程度についても、親と同程度の生活水準を維持できるよう扶養しなければならないと規定されました。

2.養育費の履行確保に向けた改正[ii]
これまでは、養育費の取決めがあった場合でも、養育費の支払いを怠った親の財産を差し押さえるには、債務名義(調停調書、審判書、公正証書など)が必要でした。しかし、今回の改正では、「子の監護の費用」について先取特権という法定の担保物権が認められました。このため債務名義が無くても、父母間で作成した養育費の取決めの書面に基づいて支払いを怠った親の財産に対する差押えを申し立てることができるようになりました[iii]。養育費の未払いがある親の給料債権に対する差押えなども増えることが予想されます。

3.法定養育費制度の導入[iv]
さらに、これまでは、養育費の額の取決めがなければその請求をすることができませんでしたが、今回の改正により、この取決めをしていなかった場合であっても、離婚後に子の監護を行う父母は相手方に対して「法定養育費」を請求することができることになりました。この法定養育費は、養育費をきちんと取り決めるまでの暫定的なものとされています[v]。また、その金額については、今後、法務省令により決められる予定です。

今回の改正では以上のほかにも、親権・監護権等に対する改正や親子交流の実現に向けた改正もされています。法務省等のwebページなどでも紹介されていますので、是非ご参照下さい。

[i] 民法第817条の2。
[ii] 民法第306条、第308条の2等。
[iii] なお、今回の改正法が施行される前に養育費の取決めをしていた場合、施行後の養育費についてのみ先取特権を主張できる。
[iv] 民法第766条の3等。
[v] 法定養育費は、①父母が養育費の取決めをしたとき、②養育費の審判が確定したとき、③こどもが18歳に達したとき、のいずれか早い日まで発生し続ける。

執筆スペシャリスト

大田 陸介
弁護士法人北辰法律事務所
大田 陸介
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