
2026年度は、労働基準法をはじめとする労働関係法令が約40年ぶりに大きな改正を迎える節目の年とされています。働き方改革の流れや労働災害防止の観点などを背景に、従来の労働時間管理や休日制度の在り方が見直されることになります。
厚生労働省の研究会報告書に示された提言は、まだ法案段階ではありませんが、今後の国会審議を経て2026年度以降に法制化される可能性が高いものです。
1.連続勤務の上限規制
■改正内容:13日を超える連続勤務を原則禁止
〇解説:現行制度では「4週間を通じて4日の休暇」を与えればよいとされており理論上48日間の連続勤務が可能でしたが、過労死防止の観点から厳格化することが検討されています。
2.法定休日の特定義務化
■改正内容:法定休日を具体的に特定して明示する義務
〇解説:従来は「週1日以上の休日を与える」との規定で曖昧な運用も可能でした。
改正後は、就業規則や雇用契約書に「日曜日を法定休日とする」など明確に記載することを原則化する方向で検討されています。
3.勤務間インターバル制度の義務化
■改正内容:終業から次の始業まで一定時間(原則11時間以上)の休息を義務化
〇解説:これまで努力義務だった制度が、過労死防止や健康確保の観点から法的義務化が検討されています。
4.有給休暇の賃金算定方法の見直し
■改正内容:「所定労働時間働いた場合の通常の賃金」方式を原則化
〇解説:現行では「通常の賃金」以外にも「平均賃金」「健康保険標準報酬日額」での算定方式が認められていますが、この2つは通常よりも低額になるケースが多く、有休をとると損という不満の要因になっていました。
改正後は「通常賃金方式」を原則とする方向で検討されています。
5.副業・兼業時の割増賃金の通算見直し
■改正内容:各事業所ごとに労働時間を管理
〇解説:現行では複数事業所の労働時間を通算して割増賃金を算定するルールがありますが、改正後は割増賃金の通算は不要とする方向が検討されています。
ただし、健康管理の観点から労災や過労死認定は引き続き労働時間を合算して判断されます。
6.「つながらない権利」のガイドライン策定
■改正内容:勤務時間外の業務連絡から解放される権利を明文化
〇解説:テレワークやスマートフォンの普及により、勤務時間外でも業務連絡が届く状況が常態化しています。
改正では、勤務時間外に業務から解放される「つながらない権利」についてガイドラインが策定される予定です。
7.法定労働時間を週44時間以内とする特例措置の縮小・廃止
■改正内容:法定労働時間を週44時間以内とする特例措置を縮小・廃止
〇解説:現在、「商業・映画演劇業・保健衛生業・接客娯楽業」で「労働者が常時10人未満」の小規模事業場では、週44時間まで労働時間を認める特例があります。
しかし対象となる事業場の87.2%がこの特例措置を利用していないため、改正後はこの特例が廃止され、すべての事業場で週40時間を上限とする方向で検討されています。
8.管理監督者への健康・福祉確保措置
■改正内容:管理監督者にも健康・福祉確保措置を導入
〇解説:現行では管理監督者は労働時間規制の適用外とされていますが、改正後は健康確保の観点から一定の休息や労働時間管理が求められる方向で議論されています。