Q. 当社の従業員が勤務中に社用車で走行中、高齢者が運転する自転車と接触しそうになり、高齢者が転倒して負傷しました。従業員はこの高齢者を救助しましたが、後日警察に呼び出され、罰金の支払いを命じられました。このような場合でも罰金を支払うべきでしょうか。
A.
不服であれば、罰金の支払いを命ずる略式命令を受け取った後、14日以内に正式な裁判を申し立てることができます。
【ポイント】
1 罰金について
罰金は、一定の金額の剥奪を内容とする財産刑の一つです。罰金も、刑事罰のひとつであって、道路交通法違反の中で定める反則金とは、その性質が大きく異なります。
罰金は、前科として犯歴簿にその事実が記載されますが、反則金は、犯歴簿に記載されることはありません。なお、犯歴簿は、本籍地の戸籍担当部署が管理するもので、一般には非公開です。また、古物商など、罰金刑で資格を失う職業もあります。
2 略式裁判について
略式裁判とは、刑事訴訟法第461条から第470条に規定された「略式手続」の俗称です。
略式手続とは、正式な刑事手続を簡略化したもので、検察官が簡易裁判所に略式起訴と呼ばれる公判前手続を請求することにより行われます。
略式手続にできる場合とは、事案が明白かつ簡易な事件で、100万円以下の罰金又は科料に相当する事件であって、被疑者に異議のない場合です。
簡易裁判所は、検察官からの請求により、書面による略式命令を発します。略式命令を受けた者は、罰金又は科料を納付して手続を終わらせることもできますし、不服がある場合には、略式命令を受け取ってから14日間以内に異議を申し立てて、正式な裁判にすることもできます。
3 正式な裁判について
検察官が罰金刑を請求する場合であっても、被告人が異議を提出した場合、または、裁判所が事件について事案が明白で簡易とは言えないと判断した場合(略式不当)は、正式な裁判が行われます。
正式な裁判になった場合、法定刑は罰金であっても、弁護人を依頼することができます。経済的に困難であれば、日本司法支援センターに弁護士費用を立替えてもらうこともできます。これにより弁護人に、検察官の有罪立証に対する反論や自分の主張を裁判所に対して行わせて、弁護してもらうことができます。
略式手続に不服を申し立てたとしても、それを理由に刑が重くなることはありません。逆に、罰金を払えば、有罪に不服がなかったことになります。罰金の支払いは、よく考えてからするようアドバイスされてはいかがでしょうか。