コラム

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財産分与の税金について

Q.  先日離婚が成立しました。その際に財産の分与として自宅の土地と建物をもらって財産分与の移転登記も終わりましたが、この場合の税金について教えて下さい。
また、自宅と一緒に住宅取得ローンを引き継いだ場合には、住宅ローン控除を受けることが出来るでしょうか?

 

A.
いま日本の離婚数は年間結婚数3に対して離婚数1の割合になって、特に若い30代での離婚数が増加しています。離婚によって財産が移動した場合どのような税金がかかるのでしょうか?今回は離婚時の自宅の財産分与に係る税金について説明していきます。

 

(1)財産をもらった人(財産分与を受けた人)

通常、財産をもらった場合には贈与税という税金がかかります。しかし離婚による財産分与で自宅等をもらった場合、贈与税は発生しません。これは財産分与権(婚姻期間中に夫婦で協力して築き上げた財産の清算や離婚後の生活保障)に基づいて取得したものと考えられているためです。その為財産分与で財産をもらった人に税金はかかりません。ただし、明らかに分与財産額が多い場合又は相続税や贈与税を免れるために行われた場合には贈与税が発生します。

財産分与で財産をもらったことでは税金はかかりませんが、もらった不動産を登記する際には税金が発生します。自宅の土地建物の移転登記の際には登録免許税が課税されます。

また新規に不動産を取得した場合、通常不動産取得税という税金がかかります。この不動産取得税については各都道府県によって取り扱いが異なりますが、新潟県では財産分与の場合には課税されません。

 

(2)財産をあげた人(財産分与をした人)

財産をあげた場合、あげた人は税金の心配はいらないのでは?と多くの方が思うのではないでしょうか。ところが離婚による財産分与は、あげたのではなく、財産分与権という権利の対価として財産を売ったことになります。つまり不動産を売った場合にかかる譲渡所得税の負担の可能性があります。財産をあげた上に税金まで取られるので、まさに踏んだり蹴ったりです。ただ、必ず税金がかかるわけではありません。財産分与時の自宅の土地・建物の時価から買った時の価格を差し引いて利益が出る場合に限定されます。しかも、自宅を譲渡した際には利益について3千万円まで税金がかからない特例があります。これは離婚による譲渡の場合でも適用可能となります。ただし適用には他にも一定の要件があるのと、確定申告が必要なので忘れないようにお気を付け下さい。

 

(3)一緒に住宅ローンを引き継いだ場合は

 財産分与で自宅と一緒に住宅借入金も引き継いだ場合、新たに引き継いだ人のローン控除の適用については以下の通りです。

(ここでいう引継ぎは新たに借入を行い、当初の借入金を全額返済したケースです。)

住宅ローン控除の対象から除かれる取得は贈与又は生計一の親族からの既存住宅の取得です。財産分与による取得はこれに該当しない為に、その他の一般的な住宅ローン控除の要件を満たしていれば適用になります。この場合、もともとの所有者の住宅ローン控除を引き継ぐわけではなく、新規に住宅ローン控除を適用することになります。その為適用初年度には確定申告が必要になります。なお、控除期間は当初居住日からとなります。

 

(4)その他注意点

財産分与による資産の取得日は財産分与の日であり、取得価額となるのは財産分与時の時価となります。協議内容の詳細や固定資産税評価証明書を残しておきましょう。分与した相手が購入した日や金額ではない為に、将来その不動産を売却する時にはご注意下さい。

※詳細は税理士にご相談下さい。

執筆スペシャリスト

藤井 章雄
パートナーズプロジェクトグループ
一般社団法人相続と遺言の相談センター
藤井 章雄
税理士の藤井章雄です。 相続税相談、相続対策業務、遺言作成業務が得意です。 税理士だけでなく、行政書士、ファイナンシャルプランナーの 資格も有しています。 生前準備、相続対策を行うことにより、 争続にならないお手伝いをいたします。
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