コラム

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死後事務委任契約について

1 死後事務委任契約とは

おひとり様で、ご自身が亡くなられた場合に、公共料金等の契約がどうなるのか、また、飼っているペットがどうなるのかなど、ご自身が亡くなられた後のことを心配されている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

おひとり様に限りませんが、ご自身の判断能力が不十分になったときに備えて、あらかじめ、ご自身の判断能力が不十分になった場合に、ご自身が選んだ方に、ご自身の生活のサポートや財産管理を任せる任意後見契約を締結する場合があります(公正証書で作成します。任意後見契約に関する法律3条)。しかしながら、任意後見契約は、委任契約ですので、ご本人が亡くなった場合には終了し(民法653条1号)、任意後見人の代理権も消滅します。任意後見人は、委任契約に基づく報告義務(民法645条)や受取物引渡義務(民法646条1項)の履行として、相続人への連絡や財産の引渡し等を行うのみで、原則として死後事務を行うことはできません。

そのため、亡くなった後の事務を委任する場合には、死後事務委任契約を締結する必要があります。死後事務委任契約は、委任者が受任者に対し、委任者が死亡した後の事務について委託することを内容とする契約です。死後事務委任契約も委任契約ですが、委任契約の当事者が死亡した場合に委任契約が終了する旨定める民法653条1号は任意規定であることから、このような契約を締結することも可能と考えられています。

 

2 死後事務委任契約の内容

死後事務委任契約では、例えば、亡くなった方の葬儀、親族や友人・知人への連絡、医療費や施設利用料等の支払い等の事務を委任することが考えられます。

ペットの世話を頼む死後事務委任契約については、長期にわたる死後事務を委任すると、受任者には過度な負担となりますし、受任者の健康状態の悪化等の事情の変更もあるでしょうから、死後事務委任契約の内容として定めるのは避けたほうが良いと考えます。ペットのことが心配であれば、ペットの引取先を定めることが考えられます。

 

3 死後事務委任契約の方式

死後事務委任契約には、特に方式はありませんが、事務を執行する時点において委任者の意思を確認できない性質上、書面によって内容を明確にしておくべきです。また、任意後見契約を締結するのと同時にする場合、任意後見契約は公正証書によらなければなりませんので(任意後見契約に関する法律3条)、公正証書で作成します。

 

4 死後事務委任契約の注意点

死後事務委任契約において報酬の定めをした場合、死後事務を依頼しようと考えている方(委任者)が、別途、親族等に一切の財産を相続させるという内容の遺言書を作成すると、相続人である親族等が意図せず死後事務の報酬を支払うことになりますので、死後事務の依頼を受けた方(受任者)と相続人との間でトラブルになる可能性があります。委任者が遺言書を作成するのであれば、死後事務の報酬を支払った残りの財産を親族等に相続させる旨定めたり、相続させようとする親族等に死後事務の報酬について説明したりするなどして、受任者と相続人との間でトラブルにならないよう配慮する必要があります。

また、行政事務については、死後事務委任契約の受任者がこれをすることができない場合がありますので、注意が必要です。例えば、死亡届の提出は、相続人や親族ではない受任者は提出することができません。ただし、任意後見人であれば死亡届を提出することができまずので、任意後見契約と死後事務委任契約を同時にすることが考えられます。

 

 

執筆スペシャリスト

柴澤 恵子
弁護士法人青山法律事務所
柴澤 恵子
幅広く、かつ、深い知識をもって、冷静に解決策を考える能力と、お困りの方を助けたい、その情熱とを兼ね備えた弁護士を目指しています。悩みから自由になれる、そのお手伝いをしたいと思っています。
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