皆さま、こんにちは。代表弁護士の若槻良宏です。
新型コロナウイルス感染症の拡大が続いており、長期戦を強いられています。この長期戦を戦時中と比較する論説や報道に接することがあります。単純に比較することはできないのでしょうが、戦時中と言われますと、政府の発表は「大本営発表」なのか、そうだとすると、この戦に勝てるのかと正直不安な気持ちになります。そして、何よりも、似たような「空気」があるとすると恐ろしいことです。
現在の新型コロナ禍において、「空気」を読まなければならない機会は増えています。例えば、マスクの着脱ひとつとってみても、確たるルールや基準がないため、いつどこでどのような状況であれば外して良いのかを明快に説明することは難しいです。私自身、何となく、その場の「空気」を読みながら(周りの様子を気にしながら)、マスクの着脱を行っていますし、皆さんの多くも同様ではないでしょうか。このような「空気」であればまだ良いのかもしれませんが、そもそも「空気」は明確なものではないため、その「空気」が危うい、怪しいとわかりつつ、その「空気」に従うことで、破滅的な事態(敗戦)に至ってしまっては大変です。「空気」は得体の知れないやっかいなものですので、「空気」が暴走しないように、時には「空気」を読まない思考も必要になるではないかと思います。
この「空気」という存在は企業経営にとってもやっかいな存在といえます。「企業不祥事を防ぐ」(日本経済新聞出版社2019年)の著者であり、コンプライアンス・危機管理などを専門分野としている國廣正弁護士は、前述の著書において、企業不祥事を防ぐキーワードとして、「多様性」、「インテグリティ(誠実性)」、「空気読まない力」を挙げたうえで、「空気」に支配されいつの間にか一線を越えてしまう日本の企業不祥事を「戦前の日本の空気そのものと」と述べ、「空気」を読まない人が組織に入ることの重要性を説かれています。
まずは、組織の中に「空気」を読まない人がいて、自由に意見を述べることができる環境を整えることが望ましいといえますので、企業の経営者には、そのような存在を認め、奨励していただければと思います。そうはいっても、組織の中では、現実的にそれを望むのは難しい側面もありますので、そのような場合には、必要に応じて社外から多様性を取り込むことを検討していただければと思います。会社法改正による社外役員の義務付けや、CGコードの改訂なども、このような流れとして理解することが可能です。今後は、女性や外国人を役員に登用する企業も増えてくると認識しています。
最近は、社外役員としてお声がけをいただく機会や、法律顧問として取締役会等への出席を依頼される機会などが増えており、経営者の皆様の意識の高まりを感じつつある今日この頃です。私たちも、クライアントの皆様に寄り添いつつも、時には「空気」を読まない存在として行動する必要があることを自覚し、誠実に尽力してまいりたいと思います。
引き続きどうぞよろしくお願い申し上げます。