コラム

Column

デジタル化社会の進展と法律の規定の乖離

新型コロナ感染症の蔓延から2年近く経過した。幸い日本では、ワクチン接種が普及した事もあり蔓延は抑えられている。

皆さんも実感されている通り、新型コロナ感染症蔓延は、社会に大激震を与えた。特筆すべきは、対人接触を回避する為、業務のデジタル化が進展した事である。令和3年9月、デジタル庁も発足した。紙とハンコの行政から、ネットを通じた電子申請行政への移行である。保守的な司法の場でも、デジタル化社会への対応が始まった。

しかし、法律は、デジタル化社会への適応に苦慮している。

例えば、契約書である。従来、紙ベースの契約書を基本としていた。デジタル化に対応すべく、電子契約、電子署名と言う手法が登場した。が、状況変化に、法律は対応できでいない。現在も紙の契約書に署名・押印が原則である。紙の契約書と電子契約、電子署名が併存している。その結果、混乱となる。新たな判例が形成されるまで時間がかかる。

例えば、会社法である。今後、上場企業で「バーチャル株主総会」が認められる予定である。時代の要請である。が、株主が一堂に集まって株主総会を開催し会社の基本方針を決定するという会社法の原則は、どうなるのか。良く分からない。暗中模索が続くのであろう。

更に一般化すれば、従来の「社会常識」は通用しない。デジタル化の進展による「新社会常識」の理解が必要となった。例えば、「在宅勤務」という「新社会常識」を前提に、「雇用関係」を理解する必要が生じた。「在宅勤務における残業時間」は、どう判断するか等、である。新たな通説・判例が形成されるまで、試行錯誤が続くのであろう。

ともあれ、デジタル化社会の進展で「新社会常識」が生まれ、「法解釈」も変化する。今は「暗中模索」「試行錯誤」時代である。

現在の経営者には、予測不可能な時代を生き抜く資質が要求される。

ご健闘を祈ります。

執筆スペシャリスト

高野 毅
パートナーズプロジェクトグループ
高野法律事務所
高野 毅

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