皆さんは、自分の「氏名」を有している。では、自分の「氏名」は、どの様に決定されるのでしょうか。
出生届に「子の氏名」という欄があります。そこで、「名」は、出生届の届出義務者の「父又は母」(戸籍法52条1項)が、届出時に氏名欄に記載することによって決定されます。
「名」は、漢字、ひらがな、カタカナに限定され、更に、漢字は、常用漢字表と人名用漢字表の掲載に限定されます(法務省通達)
自分の「名」は、自分では無く、「父又は母」が決めるという事は、自分は、自分一人で生きているわけではなく、父母をはじめとする社会に依拠して生きている、という至極、当たり前の事の一例です。
ところで、今現在、戸籍の漢字に読み方が付されていません。また、漢字の読み方に制限はないのです。即ち、私たちの戸籍上の名に含まれる漢字がどう読まれるのか、法的には決まっていなかったのです。
令和5年6月に戸籍法の改正がありました。
今後、戸籍に、本籍+氏名の「振り仮名」が記載されることになったのです。
「名」を、どの様に読むのか、戸籍に記載するのです。皆さんは、これも至極、当たり前のことと思われると思います。ですが、単純な話ではないのです。どのような読ませ方をしてもよいのか、が問題となるのです。いわゆる「キラキラネーム」問題です。
そこで、「氏名の振り仮名に用いることができる仮名及び記号の範囲」は、法務省令で定める事になりました。「大空」を「すかい」、「騎士」を「ないと」、「海」を「まりん」と読むのは、漢字の意味との関連があるから認められるが、「一郎」を「たろう」と読ませたり、「高」と書いて「ひくし」と読ませたりするのは、一般的に誤って読まれるおそれがあるので、認められない、と言う事です。
では、既に、振り仮名のない形で戸籍に記載されている人は、どうなるのでしょうか。
法律の施行(令和7年5月頃)後、1年以内に振り仮名を届出、もし、届出が無い場合、市町村長が振り仮名を記載(同法附則6条~12条)となるのです。
今現在の読み方と違う読み方が、市町村長により記載される可能性もあります。その訂正は、どうやるのでしょうか。
現代社会は、「名」一つとっても、色々な問題が派生し、一筋縄では行かないのです。
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弁護士 高野 毅
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