コラム

Column

ひな人形

【1.妻の小言】
今、我が社のホワイエに7段かざりのひな人形が飾られている。これは、私の長女が生まれた時に、妻の実家から贈られた代物で、もう40年以上前のひな人形である。毎年2月になると、妻から「ひな人形を飾ってやってよ」と催促される。ところが、私は税理士という仕事をやっているから、2月は毎日残業続きで忙しい。土曜日曜も関係なしで仕事をやっていたから家庭のことは置き去りにされていた。とはいうものの、そうそう家庭のことをほったらかしにするわけにもいかない。そこで、何度か妻の小言を聞かされていると、無視するわけにもいかなくなって、残業から帰ってきた夜中にひな人形一式を2階の納戸から引き出してきて、1階の客間に準備をすることになる。これがまた、寒い部屋なのだ。雪の降る夜中に、暖房を入れてもなかなか暖かくならない大きな客間で作業をする。だから、結局資材を運び下ろして、その日の夜中は終わり、あとはまた次。という具合で、ほったらかしになる。すると、母からいつまであのままにしておくのかと小言が入る。あんなほったらかしではお客様が来た時、客間に通すこともできないではないかと言われる。そんなこんなで、ようやく組み立てを終えて、飾り付けを済ませる。

【2.母の小言】
今度は女性陣がウキウキし始め、ひなあられを用意したり、この小道具は何んだ、などと話し込む。そのうち、ひなだんの前に、琴を置いて弾いてみたり、お茶を立ててみたりと忙しくなる。我が家の女四代、私の祖母、母、妻、長女で記念写真を撮ってみたりと盛り上がる。
これで終われば良いのだが、今度は3月3日を過ぎると、母から小言が入る。「早く片付けないと、娘が嫁に行けなくなる」などと言われる。私は、3月の上旬が年間で一番忙しいピーク時なのだが、それはそれ、これはこれ、ということになる。
私はこのひな人形を見ると、そんな思い出がいつも頭をよぎる。

【3.行き場を失う】
長女はいつの間にか無事結婚して、娘を出産した。では、この7段かざりのひな人形は娘の元に送ってやろうかと思っても、マンション住まいの娘夫婦のところでは、こんな大きなひなだんは置く場所がない。だから、小さなもので十分だと断られる。あの、色々な思い出の詰まったひな人形は行き場を失って、日の目を見ることがなくなってしまった。
せっかくのひな人形、どうしようかと思う。妻の実家の妻に対する愛情が、あの立派なひな人形となって我が家に贈られてきた。そして、我が家の女四代の思い出を作ってくれたあの綺麗なひな人形。そして、私の確定申告時期と重なった思い出。そんな中で、思い出の詰まったひな人形を、間違っても処分などできるものではない。何か有効な方法がないかと思っていた折、我が社が広い場所に移転した。これをきっかけに、会社の正面入り口のホワイエに飾ることができた。それも、ただ飾っておくだけでなく、時代の変化に合わせてお客様にみていただく演出で毎年、確定申告でお見えになるお客様をお迎えしている。

【4.生かされる】
私にとっては、重い思い出しかなかったひな飾りでも、会社で展示することで、会社においでになるお客様に何か非日常を与えてくれる。それにより、お客様に少しでもリフレッシュしていただき、商売の励みになってくれれば、このひな人形にも新たな効用が生まれてくるのだと感じることができる。
周りの環境が変われば、モノの役割や使い方は変わってくる。環境はどんどん変化するが、モノは同じ姿をしてそこにある。それをどう活用するかはこちらの問題だ。結局、どんな活用方法があるか、どんな対応方法があるかはこちらが常に意識しながら対応することで、モノが生かされるか、生かされないかが決まる。経営も同じことだと考えている。

【5.アンゾフの理論】
皆さんは、アンゾフの理論をご存知だろうか。
市場と製品という2軸で成長戦略をマトリックスでとらえる考え方だ。わかりやすく説明すれば、商売は環境の変化に応じて対応すること、ということである。その環境を2つに大きく分けて、市場という環境と製品という環境の変化に応じた対応を考えることである。もちろん、両方の環境変化に対応することも大切だが、それは非常にリスキーだとされている。だから、あなたは市場の変化に対応する方法を考えるべきか、製品の変化に対応するのかを決めた方が良い。市場の変化に対応するとは、自分の持っている商品や製品を新しい市場に対応させることを考えることであり、製品の変化に対応するとは、自分の市場、お客様に対応した新たな製品を準備することである。先のおひな様の例にたとえて話をすれば、大きなおひな様は客間があるような一軒家なら飾る場所もあって喜ばれるが、マンションのようなところでは、飾るところがないからということで敬遠される。では、この大きなおひな様はどうすれば良いのかというと、大きな場所があるところで飾ることが考えられる。それが、飾る場所のある会社のロビーなどが新たな活路ということになる。これが、新しい市場という意味に理解できよう。
では、今までの個人宅での市場には大きなおひな様ではなく、小さなおひな様という新たな製品が対応できるということになる。

【6.おわりに】
おひな様を例にお話ししたが、あなたの会社の製品も、おひな様のように環境に対応して新しい市場を見つけていますか、それとも、売れなくて不良在庫になってしまっていませんか。そんなことを、もう一度じっくりと検討してみてはいかがでしょうか。

 

 

◆講師プロフィール◆
パートナーズプロジェクトグループ
株式会社パートナーズプロジェクト
髙野 裕

得意分野
中小企業経営コンサルティング
租税法
決算書の読み方
不動産取引

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執筆スペシャリスト

髙野 裕
パートナーズプロジェクトグループ
株式会社パートナーズプロジェクト
髙野 裕
税理士の髙野裕です。 税理士だけでなく、中小企業診断士、行政書士、 ITコーディネーター、ファイナンシャルプランナー、 宅地建物取引士、登録政治資金監査人の資格も有しています。 また、新潟大学で非常勤講師をしています。 中小企業経営者様向けにセミナーも多数開催しております。
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