コラム

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「仮名加工情報」とはどのようなものですか

Q.  令和2年に個人情報保護法が改正されて、「匿名加工情報」のほかに「仮名加工情報」に関する規定ができたそうですが、どのようなものでしょうか。改正の目的とあわせて教えてください。

A.
仮名加工情報とは、他の情報と照合しない限り特定の個人を識別できないように、個人情報を加工して得られる個人に関する情報のことです。

 

【ポイント】

1 令和2年の法改正について

個人情報保護法は平成15年に制定された法律ですが、当時は電子計算機の機能の向上と国民のプライバシー意識の高まりにより、個人の情報が丸裸にされてプライバシーが侵害されることを防止することを目的としていました。

しかし、現在の社会状況ではクレジットカードの利用やスマートフォンの位置情報等、個人の情報を集める手段が多様化し、法律制定当時の規制では個人のプライバシーを守れない状況が生まれています。他方、個人情報を企業活動に活かす需要が国際競争の中でますます高まっています。

そこで、国は個人情報保護委員会を設け、平成27年改正法の附則において、3年毎に見直しを検討することになりました。

令和2年の改正法は、この3年毎の見直しとして、令和2年6月12日に公布されました。施行日は、交付より2年を超えない範囲内で、政令で定める日とされており、令和3年1月末現在は、政令が出ていませんので、令和4年6月12日までのある日ということになります。

 

2 改正法の概要

今回の改正の概要としては、(1)個人の権利の保護について、請求権を拡充して更に厚くしたこと、(2)事業者が守るべき義務の在り方を拡充、明確化したこと、(3)事業者の自主的な取り組みを促す仕組みの在り方について、特定分野の認定団体を対象にできるようにしたこと、(4)データ利用の在り方を改めること、(5)違反行為へのペナルティを重くすること、(6)越境(国外)事業者に対する罰則をともなう義務・命令等があります。

 

3 仮名加工情報について

仮名加工情報とは、他の情報と照合しない限り特定の個人を識別できないように個人情報を加工して得られる個人に関する情報(具体的には、氏名、生年月日、性別、住所、所得等の個人に関するデータ)を、当該情報を所持する者が、照合表など他の情報と照合しない限り特定個人を識別できなくするもので、情報の所持者の活用を可能にするものです。

平成27年改正法では、データの利活用を目的に「匿名加工情報」(特定の個人を識別できず、加工元の個人情報を復元できない程度に加工した情報)が新設されましたが、データの所持者の活用に限界がありました。仮名加工情報の利点として、生の個人情報のように、(1)開示・利用停止等の請求の対象にならないこと、(2)当初の利用目的としては特定されていなかった新しい目的での分析が可能となること、が挙げられます。

しかし、仮名加工情報は対照表を利用すれば生の個人情報に復元できるものですので、匿名加工情報にない規制(①対照表等の安全管理義務、②第三者への提供の原則禁止、③本人への到達行為の禁止、④利用目的の制限、⑤利用目的達成時の消去(努力義務))があります。

 

4 加工の方法

個人情報の具体的な加工方法については、今後委員会が策定するガイドラインで示される予定です。

執筆スペシャリスト

星野 徹
パートナーズプロジェクトグループ
ほしの法律事務所
星野 徹
弁護士の星野 徹です。 民事代理業(交渉・調停・訴訟)、倒産事件(破産申立・任意整理)、 家事事件代理(離婚事件・相続事件)、刑事弁護が得意です。 また、長岡造形大学で憲法の講師もしています。

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